虫の鳴き声と鳥のさえずりが響くなか、土の匂いと採れたての野菜の香りに包まれる――。「くにたち陽向菜縁(略称:くにひな)」は、生きづらさを抱える方も、しょうがいのある方もない方も、子どもから高齢者まで多世代の市民が集い交流できる「居場所」だ。
(冒頭写真)この日収穫したのは小麦、ニンジン、ニンニク、いちごと盛りだくさん。
いつ来ても大丈夫
小麦を刈り取り麦束にする明峯さん。豊富な経験をもとに、参加者にそっと寄り添う。
ボランティアの明峯惇子さんは、農園を初期から支え続けてきたひとり。50年にわたり各地で農園づくりに関わってきた彼女は、2021年に社協が農園を開園すると「つながる農園」の理念に共感して参加した。
「食べものはできる限り、自らの手で育てたもの、あるいは相手の見える関係の中で生み出されたものを食べたい。その喜びを多くの人に伝えたい。そして農園は、いつ誰がふらりと参加しても、何かしら体験してもらい、楽しさを見つけられる場所にしたいと思っています。」
農園はジャガイモ1種の栽培からスタートし、今では明峯さんや参加者、社協職員など皆の力により、50種以上の野菜と花を育てている。それぞれ収穫時期が異なる野菜を栽培しているため、来園者はいつ来ても違う体験ができる。
草を堆肥に積む、落ち葉や藁をぬかと合わせて温床をつくる、ポットに種を撒く、苗を定植する、間引く、支柱を立てる、収穫する、といった農作業の基本を皆で一緒に体験できるのが魅力だ。
収穫時には「おいしそう!」と歓声があがることも。苦労して世話した野菜が立派に育ち、喜びもひとしお。
農園での時間、自由に過ごして
「まいた種が2週間もすれば、作物の形をして育っている。慣れない手つきで植えたきゅうりに花が咲いた!と喜ぶ。そんな体験を重ねるうちに、いつの間にか作業に夢中になるんです。」
人と話すのは苦手と言っていた人が、植物をはさんである日、隣の人と会話をしている。巨大なトマトやキュウリを見つけて、その場で頬張り、「おいしい!」と思わず笑顔になる。くにひなでは、育てる喜びを自然と分かち合う光景があちこちで見られるという。
「最初はおそるおそる来られる方も、通っているうちにのびやかな表情になってくる。農園は四季の移り変わりを感じられる場所。どんな方にも味わってほしいと思う。身をおいてみると気持ちいいですよ。」
農園は居心地良く過ごせることを大事にしているので、参加者は気分によって、積極的に作業するのも、静かに時間を過ごすのもOK。それぞれの関わり方が尊重される。

農園の中に設けられた休憩スペース。ここで過ごすのも大事な時間だ。

テーブルには農園で採れた花が飾られていた。
「つながる農園」を目指して
収穫したジャガイモ、エンドウ、レタス、タマネギ、キュウリ、トマト…そのときどきの旬の野菜は、参加者がお土産として持ち帰る。また福祉会館で出店したり、会館内にある「喫茶わかば」に食材提供したり、フードバンクに寄付したりと様々な形で多くの方に届けている。農園の野菜を食べた方から、「おいしかったよ」と直接声をかけてもらうこともあるそうだ。
2023年には農園の愛称が「くにたち陽向菜縁(略称:くにひな)」に決定。公募で集めたアイディアをもとに参加者で話し合い、「つながる農園」の想いが込められた。
くにひなは、野菜と一緒に、人と人、そして地域とのつながりも育む。虫が鳴き、鳥がさえずるこの自然豊かな農園で、これからも笑顔が溢れますように。
今後は農園活動を一緒に行うボランティアも募集予定。興味がある方は、くにたち社協までぜひお問い合わせください。

農園の看板は参加者の手づくり。それぞれが得意なことを発揮して関わっている。

くにたち陽向菜縁(略称:くにひな)
多世代、そして多様な背景をもつ市民が一緒に活動できる「つながる農園」を目指して2021年度に開園。
お問合せ先:地域福祉係
042-580-0294
csw@kunitachi-csw.tokyo
Instagram @kunihina_saien
取材陣にふと浮かんだ疑問、「そもそもボランティアってなんだろう?」。その形を探るべく、取材した方々に「あなたにとってボランティアとはなんですか?」と質問させていただいた。もちろん答えは、百人百様。
Q.あなたにとってボランティアとは?

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