きっかけはお茶会から
耐熱ポリ袋に米と水を入れて湯煎すると約30分で炊きあがる
国立第六小学校の南側に、四軒在家と呼ばれている地域がある。その四軒在家のご近所つながりで、「女子会」と称して、防災など地域の課題について勉強会をしている11人の女性たちがいる。自治会とは別の独自の集まりだ。
「そもそもはあの東日本大震災があったときにみんな驚いて外に飛び出して、そのときは、近所で炊き出しができたらいいねっていう話があったんです」と福井さん。
しかし時がたつとだんだんそうした危機感も忘れがちになり、ゴミ集積所が共同だったときは互いにコミュニケーションが取れたものが、個別収集になってからはほとんど顔合わせもなくなり…。それでお茶会をしようと始めたのが7年前。
「最初はお茶だけだった。でもせっかく集まってそれじゃもったいないからと、AEDの研修でも受けてみよう、災害時の水道水とか災害時トイレどうするの、と市役所に相談して講師に来てもらった」
そのあとは、誤飲を防ぐための体操をやったり、高齢者になってもうまく生き延びるためのいろんなノウハウを知っておきたいと、コロナ前から勉強会を続けてきたという。
こうした炊き出し訓練はメンバー宅の駐車場で年に1度行う。使用する道具などの確認もできるので、災害時の備えになる
コロナ禍から生まれた花火
勉強会は2か月に一回。「女子会」のメンバーは55歳から80歳過ぎまで。あえて代表をつくらず、リーダーはいない。企画は福井さんがみなさんに相談しつつ、各自の提案もとりいれて最終的にはみんなで企画に取り組む。
「ただ工夫しているのは、全員が声を出して話そうと。よく喋る人はそれですっきりして帰るけど、一言も喋らなかった人ってやっぱりどうしてもモヤモヤって帰ると思うので、必ずどうですか、最近何かありませんかっていうふうに声かける。そういう進行はやっています」と福井さん。
同じことを繰り返しても飽きてしまうから、毎回テーマは変えていく。
コロナ禍で集まること自体ができなくなったとき、黙っていてもできるものをと、道路に出てみんなでただもくもくと、花火をやった。いまではそれが楽しかったから毎年やってほしいと、続けている。コロナ禍から生まれた花火…。楽しいことも大切なつながりだ。
8月恒例、花火大会の様子。コロナ禍の3密回避をきっかけにはじまった。「こういうときは思いっきり楽しみます!」
地域を大事にしたい思いは同じ
30年ほど前、福井さんが富士見台から四軒在家に引っ越した時、周りは仕事をしている人が多く、挨拶を交わすくらいだった。その後、女子会を開くようになり少しずつ親しくなってきたそうだ。
近年、女子会メンバーの半数以上が後期高齢者となり、公助の必要性を感じている。
「知らない事もあるので、市役所や社協のCSW(コミュニティソーシャルワーカー)に相談しアドバイスを受けて、訪問や見守りをお願いしています」
他人の生活にちょっと立ち入ってしまう事があっても、良いと思った事は行動する。
「それを学んだのは数年前。娘の住んでいる岩手県宮古市を訪ねた時、朝の散歩をしていると初めて会う人もおはようございますと、声をかけてくれる。信号の無い横断歩道でも車がちゃんと止まってくれる。みんな丁寧にお辞儀して渡って行く。宮古じゃ当たり前。小・中学生に挨拶されるとうれしいですよ」
女子会では認知症や介護制度の資料を社協から提供を受け、勉強会も何度か行なっている。
「もし、ご近所に当事者の方がいたら、自分の親だったらの視点で考えたい。他人が出来ることには限界があるし、仲良しでも立ち入れない事も承知しているが、見て見ぬふりは出来ない。これからも地域、女子会のつながりを大事に、楽しい時間を共有していきたいと思います」
これはメンバー全員の共通の思いだ。
今年は、元旦から大きな地震があり、その後も日本全国で地震があった。緊急時に備えての勉強会(炊き出しも含めて)を定期的に続けたいと考えているそうだ。
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