1984(昭和59)年に開所した国立市障害者センターが、今年で40周年を迎えました。
国立市社会福祉協議会が開所時から運営している「あさがお」は、知的しょうがいのある方が通い、作業や運動、屋外活動などを行う生活介護の事業所。
今回は、長年事業に関わってきた元職員の網谷 道穂さんにお話しをお聞きしました。
当たり前にできることから
国立市障害者センター内「あさがお」の活動室にて
網谷 道穂さんは、学生時代に国立市公民館の青年学級(コーヒーハウス)に参加する中で、しょうがいのある方もない方もともに運営する「喫茶わいがや」の立ち上げに参画。
のちに、そこで出会った先輩の勧めもあり「あさがお」の前身「あさがお福祉作業所」の職員募集に応募することになる。
大学では社会教育を学び、福祉には関わっていなかったが「地域でともに生きるということを大切にしたいという思いがあった」と話す。
「今思うと、10歳まで過ごした仙台の小学校の同じクラスに、しょうがいを持つ同級生が1、2名いたのでしょう。休み時間や放課後も一緒に遊んでいましたが、彼らの存在はごく普通でした。差別とか偏見も知らず、いじめということもなかったと思います。今改めてそのことが、当たり前であり、大切だと感じています」
「あさがお」の活動
国立市障害者センター
開所当時は東京でも通所の更生施設※はほとんどなく、国立市障害者センターも試行錯誤しながらのスタートだった。
知的障害者更生施設(当時は精神薄弱者更生施設)として事業を開始した「あさがお」では、その前身が福祉作業所だったこともあり、新聞の購読者にサービスで配布するグラビアの袋入れなどの軽作業を中心に活動を始めていた。
※更生施設
満18歳以上の障害者を入所もしくは通所させ、生活支援、職能訓練など、自立して地域で社会生活を行なえるよう、支援または訓練することを目的とした福祉施設。
「紙すき」の作業は牛乳パックのポリエチレン部分をはがし細かくちぎる
現在は生活介護の事業所として、知的しょうがいのある方を対象に、作業や運動、屋外活動などを行っている。
紙すきや手工芸といった創作作業や、さくら通りの清掃、国立市障害者センターのすぐ隣にある東京都多摩障害者スポーツセンターを利用して、運動を楽しむ日もある。
手工芸で使用している編み機。マフラーや帽子がつくれる
「利用者さんと一緒に館内での作業や廃品回収、行事での外出や旅行など、さまざまなことをしました。とても楽しかったですね」と話す網谷さん。
朝の散歩風景
久しぶりに活動室を訪れた網谷さんだったが、一歩部屋に入ると笑顔でかけよる利用者さんたち。ハイタッチをして再会をよろこび、まるで今日も勤務しているかのように、自然と輪に入っていった。
利用者さんの中にはセンター開所当時から通う方も
コミュニケーションを大切に
「あさがお」に通う方のなかには、言葉での意思疎通が難しい方もいる。長年、福祉の現場にいる網谷さんが、コミュニケーションの中で気をつけているのは “先回りしない”ということ。
「近年、傾聴という言葉が広まっていますよね。ちゃんと相手の思いを聞くってとても大事。実は僕、せっかちなんです。だから、つい『つまりこういうこと?』と言いたくなってしまうので、相手の言葉や意思表示を自分の思いで先回りせず、待つように心がけています」
相手がどんな人でも、きっとそれは同じ。子育てや教育の現場でも、コミュニケーションは安心あってこそ。ちゃんと聞いてもらえると、思いを素直に伝えられるものだ。
それぞれのペースで作業をすすめる様子
必要な支援を選んで受けられる自立
2000年代、介護保険法が施行されてから福祉のあり方も変化してきた。法や制度の改正に伴い、かつては“訓練”といわれていたものが“支援”に変わり、“指導員”は“支援員”になった。
「ことばが変わると意識も変わります。誰もがより対等に、暮らしや生き方を自分で選択できる環境が整ってきたと感じます」
「以前は、何でも自分でできなければいけない、それが自立だといわれた時代がありました。できないことは人に頼むのも一つの選択。お世話になるのではなくて福祉のサービスとして利用することもできます」
自分なりの考えや思いをもって生活していくことも、自立の一つのあり方。時代の流れとともに、それが当たり前の世の中になってきている。
国立市障害者センターは「地域の中でともに生きる」自立の支援を続けていきます。
国立市障害者センター
生活介護「あさがお」「あすなろ」と障害者自立促進事業「ひまわり」を運営しています。
東京都国立市富士見台2-1-32(地図をみる)
開館時間:8時30分~17時15分
休館日:土日、祝日、年末年始
Instagram @centreandasunaro_kunitachi_csw
【ホームページ】
http://kunitachi-sca.org/index.html
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国立市ボランティアセンター
電話:042-575-3223
メール:kvc@@kunitachi-csw.tokyo
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