「くにっ高生」は国立市在住・在学の高校生が学校の垣根を越えて始めたプロジェクト。矢川緑地の観察や清掃、イベントの企画などを通して「くにたちの自然環境を考えるきっかけにして欲しい」と日々活動しています。
(冒頭写真)矢川とママ下湧水・府中用水が合流する矢川おんだしにて。くにっ高生メンバーとまち歩き企画の参加者、アドバイザーの大谷さん
くにたちで生まれた高校生プロジェクト
放課後におこなわれる企画会議の様子
「くにたちを元気に!」を合言葉に活動するくにっ高生は、国立市ボランティアセンターが呼びかけ、第五商業高校・国立高校・国立音楽大学附属高校・NHK学園高校の生徒が中心となって、2023年4月に発足した。
活動内容は、毎月の矢川観察や清掃などのフィールドワークを通じて課題を見つけ、会議で話し合う。その内容は、次のフィールドワークやイベントの企画につなげていく。
アドバイザーは「くにたち桜守」の大谷和彦さん。
「小さな生きものや矢川の水が少なくなっていることは、今は自分たちに関係ないと感じるかもしれません。しかし、すべての命はつながっていて、小さな変化がさまざまなことに影響していきます。ネットの情報ではなく、実際に“見て感じて”本当の自然を知ってほしいと思っています」と、熱い想いを胸にくにっ高生を支えている。
現在60名ほどの学生が在籍していて、毎月の会議やフィールドワークには20〜30名が集まる。
会議では意見やアイデアを自由に発言できる、和やかな雰囲気。各学校で生徒会や部活などで声をかけて、毎月のように新しいメンバーが加わる中で、自発的にフォローし合っている姿が印象的だった。
活動の中で作られた「やがわのマップ」は、カラフルなイラストもまじえて、矢川周辺の自然環境や生きものについてわかりやすくまとめられている。
イラストやキャラクターでわかりやすく解説している「やがわのマップ」
地域に想いを届ける
国立旧駅舎で開催した「あっぱれ!矢川深掘りプロジェクト」にて
2024年3月には国立旧駅舎にて活動に関する展示と発表をおこない、その中でくにっ高生によるトークショーを開催。地域の人たちに直接想いを届ける機会となった。
こうした成果物をまちの人に見てもらえたことは、大きな自信につながったとメンバーの一人。
「展示やトークショーに足をとめてくれる人は決して多くはなかったけれど、話を聞いてくれた人はとても熱心に耳を傾けてくれました。ぼくたちが活動していることに関心を持ってくれて、くにたちの自然について考えてくれる人が増えたならとてもうれしいです」
イベントの集客や想いを届ける工夫に苦労したというメンバーは、
「地域やたくさんの人に向けた企画に参加できることは、とても貴重な体験だと思います。学校の授業や行事では味わえない、達成感がありました」と、活動に確かな手応えを感じた様子。
2024年8月、矢川プラスで開催した「くにたち自然クイズ大会」では、たくさんの子どもたちがクイズに参加
昨秋には2回目となる矢川のまち歩きイベントを開催。「矢川自然探検隊 vol.2」と称して、矢川周辺を歩き、クイズやオギをつかったミミズク作りをした。
それぞれの得意を生かして企画や準備をすすめ、ポスター制作やクイズ作成、ルートの考案など、当日イベントに参加できないメンバーも率先して準備に協力。
広報としてSNS運用チームも始動した。
「活動を知ってほしいという目的ではじめました。自然環境のことを考えたときに、自分たちが何か変えるということよりも、まずはたくさんの人に知ってもらって、たくさんの人がそれぞれに小さなことから行動できたら、結果的に大きな変化になると考えました」とSNSチームのリーダー。
矢川の魅力再発見
「矢川自然探検隊 vol.2」は矢川プラスからスタート。手作りの旗を掲げるメンバーが先導して、秋の風景を楽しみながら滝乃川学園、矢川おんだし、ママ下湧水を辿っていく。
まち歩きの様子。ポイントごとにクイズを出題
途中、矢川の水温を測ると18度。触れてみると、意外と温かい。矢川は湧水を水源としていて、地下では外気の影響を受けにくいので、年間を通して水温が変わらない。
「自分の肌で感じたことで、自然環境に問題意識を持つようになりました。温暖化や生態系の変化が進み、植物や農作物を育てる上でも毎年新しい対策が必要になってきています。自然環境も同じスピードで変化しているならば、自分にできることは何か真剣に考えるきっかけになりました」そう話すのは、畑を借りて作物を育てているというメンバー。
ママ下湧水で水温を体感。「ママ」は古語で傾斜地や崖線のこと
矢川を辿っていると、さまざまな野鳥に出会える。ゆらゆらと気持ちよさそうに泳ぐカモや存在感のあるアオサギ、じっと魚に狙いを定めるシラサギ、姿は見せずに高い声で鳴くあの鳥は何だろう…?
まちの中心地からほんの少し歩くだけで、豊かな緑と水源があり、東京では珍しい田んぼが残り、タイムスリップしたような景色が広がっている。
くにっ高生に参加するまでは、国立市の自然について知らなかったというメンバーも、
「国立市はとてもいいまちだと思う。自分が暮らすまちの自然のことも、もっと知りたくなりました」と、自然への関心が広がった様子。
まち歩きの終盤は、国立第六小学校のビオトープと矢川いこいの広場へ。ビオトープとは「生きものの暮らす場所」という意味で、大小に関わらず生物が住みやすい自然環境のこと。
国立第六小学校は敷地内に矢川が流れていて、小さな生きものの生態系を感じられる場所。学校の敷地に川が流れているのは、東京都では2校しかない、貴重な環境なのだ。
国立第六小学校の敷地内を流れる矢川とビオトープ
矢川いこいの広場では大谷さん指導のもと、ミミズク作りにチャレンジ。縁起物として知られるミミズクを、ススキによく似ているオギを束ねて、丸くてかわいらしい形にしていく。
ミミズク作りの様子
この日のために多摩川で300本のオギを刈ってきたのは、まち歩きには参加できなかったメンバー。
「誰かのためになることはやりがいがあります。大変なことがあっても、仲間とごはんを食べに行ったり、おしゃべりしたり、活動だけではない楽しみもたくさんあるので、自分なりの喜びを見つけて取り組んでいます」と、日々の活動を楽しんでいる。
完成したミミズク。同じ材料でも形や表情に個性が出る
「もっと声をかけて、活動をつなげていきたいです。私たちで終わらせない。少し先の未来のために、いいサイクルを作っていきたいです。新しい仲間に会えるのを楽しみにしています」と話してくれたのは、活動二年目のメンバー。高校生活最後の年は、下の世代にバトンを渡すことが課題だという。
一年の集大成として、年度末には展示やイベントの企画を予定している。自分ができる小さなことを、一人でも多くの人が考える機会になりますように。
くにっ高生
Instagram @kunikkousei
(旧Twitter) @kunikkousei
取材陣にふと浮かんだ疑問、「そもそもボランティアってなんだろう?」。その形を探るべく、取材した方々に「あなたにとってボランティアとはなんですか?」と質問させていただいた。もちろん答えは、百人百様。
Q.あなたにとってボランティアとは?
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